乱れた振り子（レックスVer.）

スターライト様

レックス: 「クノンの様子がおかしい？」
アルディラ: 「ええ、このところ極端に口数が少なくなってしまって
まるで、私のことを避けてるみたいなの」
レックス: 「なにか、心当たりは？」
アルディラ: 「まるで無いのよ　だから、こうやって貴方に声をかけたの
私以外で、あの子が話をしていたのは貴方だけだから
なにか聞いてない？」
レックス: 「そう言われても　俺にも、まるで見当がつかないよ」
アルディラ: 「そう・・・」
レックス: 「気になるなら、本人に聞いてみたら？」
アルディラ: 「え？」
レックス: 「どのみち、このまま放っておくつもりはないんだろう？
だったら、思いきって本人と話したほうがいいんじゃないかな」
アルディラ: 「でも・・・」
レックス: 「不安だったら、俺もつきあうからさ？」
アルディラ: 「そうね・・・　やっぱり、それが一番いい方法よね・・・」

アルディラ: 「・・・クノン？」
クノン: 「！　・・・なにか、私にご用でしょうか？」
アルディラ: 「いや、別に特別な用はないけど・・・」
クノン: 「でしたら、私は作業がありますので」
アルディラ: 「あ・・・」
レックス: 「待ってよ、クノン　話をする時間くらいとってくれても」
クノン: 「話し相手なら、貴方がしてくだされば充分でしょう」
レックス: 「な！？」
アルディラ: 「クノン、貴方・・・」
クノン: 「事実を指摘しただけです
会話を楽しむという目的なら、私よりもその人のほうが向いています」
レックス: 「向いてる、ってそういう問題じゃないだろ！？」
クノン: 「ならば、どのような問題なのですか！？
私は看護人形です　生物の傷を癒すことを目的に開発された人形なのですよ
それ以外の役目など　わ、た、しに・・・っ」
アルディラ: 「・・・クノン？」
クノン: 「う、あ、あ・・・？　Ａａａ！？　Ｕａａアアアァァァッ！？」
アルディラ: 「どうしたの、クノン？　しっかり、しっかりなさいっ！？」
クノン: 「ＡァａＡアァァａａ　ＡアａァＡａＡａａッ！？」
: （バタッ）
レックス: 「アルディラ！？」
アルディラ: 「早く、ベッドに！　処置しないと、回路が焼き切れてしまう！！」

レックス: 「・・・・・・」
アルディラ: 「・・・」
レックス: 「どうだった？」
アルディラ: 「過剰な負荷による熱暴走よ　ただし、原因は判らない」
レックス: 「そんな・・・」
アルディラ: 「クノンはしきりに胸を押さえて、苦しみを訴えていたわ
そこには、あの子の中枢制御部がある
蓄積したデータを元に、学習判断を行っている、まさに心臓部分よ
もし、異変がそこに端を発しているものならば・・・」
レックス: 「まさか、クノンはもう・・・」
アルディラ: 「心配しないで　パーツごと、新しく取り替えれば、彼女は助けられるわ
その代わり・・・
彼女のメモリは全て初期化されてしまうことになってしまうわね」
レックス: 「！？」
アルディラ: 「それでも、完全に壊れてしまうよりはずっとマシよ」
レックス: 「そんな・・・
なにか、他に方法はないのか！？」
アルディラ: 「あるなら、とっくに実行してるわよ！」
レックス: 「・・・っ」
アルディラ: 「スキャンだけじゃない
メンテハッチを開けて　目視で、すみずみまで検査したの！
でも、根本的な部分であの子のボディに欠陥なんて無かった！
わからないの・・・　どうして、あの子があんな異常を起こしているのか・・・
それがわからない限り　私には、なにもしてあげられない・・・」
レックス: 「アルディラ・・・」
: （俺は・・・）

クノンの側にいる

クノン

「ん・・・」

レックス

「目が覚めたかい？」

クノン

「レックス・・・さま・・・」

レックス

「無理に起きないで！　そのまま、休んでいなくちゃダメだよ」

クノン

「ああ・・・私は・・・機能不全を起こしてしまったのですね」

レックス

「熱が出たんだよ　働き過ぎだってさ」

クノン

「・・・いいえ　それはありえません
ここ数日、私は看護人形としての職務を、放棄していましたから」

レックス

「え？」

クノン

「ずっと、思考のみを繰り返してきました
貴方に言われた答えを、見つけるために・・・」

レックス

「そう、だったんだ」

クノン

「でも、考えるほどにわからなくなってきてしまったのです
分類できない思考の断片が、いくつもあふれ出してきて
それを解析していくうちに、私は、それが恐ろしいものだと知ったのです」

レックス

「恐ろしいもの、って？」

クノン

「言えません・・・
アルディラさまにも　まして、貴方には絶対に言えない
知られてはならないことなのです！」

レックス

「だけど、クノンが苦しんでいる原因はそれなんだろう？
だったら、このまま放っておくわけにはいかないよ！」

クノン

「心配はいりません
解決する方法は　もう、わかっていますから」

レックス

「え・・・」

（ビリッ！）

レックス

「ぐあッ！？」

（バタッ）

クノン

「許してください」

これが、最良の方法なのです・・・
アルディラの側にいる

アルディラ

「あの子は、私がこの世界に来た時からずっと側にいてくれた
私たち融機人は貴方たち人と比べて病気に対する免疫が弱くてね
定期的に抗体を投投薬しなければ、たやすく身体に不調をきたすの
護人になった今でも　それだけは変わらない
そんな私を、クノンはずっと支えてきてくれたの」

レックス

「そうなんだ」

アルディラ

「あの子の配線ね　あちこちが熱で溶けてぼろぼろになってた
一度や二度じゃない　きっと、あの子は今までにも、あんな苦しみを・・・」

レックス

「君のせいじゃないよ」

アルディラ

「でも、気づいてあげられなかった！
側にいるのが当たり前だと思ってた　何も知らずに、あの子に私は甘えて・・・」

レックス

「だけど、クノンはそれを望んでいたよ
彼女は、義務として君の側に仕えいていただけじゃない
そうじゃないなら　君を喜ばせる方法を俺に聞くなんてことするわけないよ！」

アルディラ

「クノンが・・・　貴方に・・・」

レックス

「どうすれば、君に「うれしい」って思ってもらえるか相談されたよ
君に笑ってほしくて　あの子は、必死に感情を学ぼうとしていたんだ」

アルディラ

「あの子が、自分からそんなことを・・・」

レックス

「なあ、アルディラ　結論を急ぐのは止めにしよう？
あの子が積み上げてきた、記憶や感情の断片を、俺は無駄にしたくないんだ
あせらないで　もっと別の方法を探そうよ
俺も、手伝うから」

アルディラ

「レックス・・・」

: （警告音）
: アルディラさま　お許しください
私は、やはり欠陥品の人形でした
貴方の笑顔がまぶしくて
自分の力で、それを見たいと願ったけれど
どうしても、そのための方法を見つけることができませんでした・・・
それだけでは、ありません
不可能だとわかってしまった、その時から
私の思考は、おそろしいものに蝕まれていってしまったのです
必死に否定しました
けれど、どうしてもそれは削除できなくて
だから、私は・・・
クノン: 「自分を、破棄します
この胸へと巣食った　真っ黒な痛みを知られたくないですから・・・」
アルディラ: 「やめなさい、クノン！」
クノン: 「・・・！？」
アルディラ: 「帰りましょう？　貴方は、どこも悪くなんてないのよ
貴方がこんな場所に来る必要なんてないの！」
クノン: 「従えません！」
アルディラ: 「！？」
クノン: 「私自身が、誰よりもわかっているんです
こうする以外に方法がないことを・・・」
レックス: 「クノン・・・」
クノン: 「それ以上、側に寄らないで！
私に、貴方を殺す理由を与えないで！！」
レックス: 「な・・・っ」
クノン: 「ずるい！　ずるい！　みんな、ずるいです！
私が一番欲しいものを　貴方は、いつだって手に入れることができる
アルディラさまと一緒に「うれしい」と感じることができる！
私には、できない　それがうらやましくて　悲しくて・・・
憎らしい！！　胸がズキズキ痛んでおかしくなってしまいそうなんですッ！！」
アルディラ: 「クノン・・・」
クノン: 「だから、私はもうアルディラさまの側にいられません
こんなことを考える人形は、処分せねばいけないんです！！」
レックス: 「よすんだ、クノン！」
クノン: 「近づかないでっていってるのに！」
: （ビリッ！）
レックス: 「・・・」
クノン: 「お願い、です・・・　私は、貴方のことを傷つけたく・・・」
レックス: 「傷つけられても　俺は、君のことを止めるから」
クノン: 「！？」
レックス: 「隠すなよ？　俺が憎いんだったら　そのまま、それをぶつければいいんだ」
クノン: 「う、あ、あ・・・」
レックス: 「俺を止めたいのなら本気になってみろ！　クノン！？」
クノン: 「うああぁぁぁっ！！」
: （イベントバトルへ）
クノン: 「どう、して・・・　私を、破壊してはくれないのです、か？
私は貴方のことを憎んだ、のに・・・」
レックス: 「誰かを憎いって思うことは、誰にだって必ずあることだよ
人間なら、ね？」
クノン: 「あ・・・」
レックス: 「クノン、君はおかしくなったわけじゃない
初めて知った感情に戸惑ってしまっただけなんだよ？」
クノン: 「感情・・・
あんな、おそろしいものが・・・」
レックス: 「人の心は、全部が全部きれいなものばかりじゃないんだ
憎いって気持ち　うらやましい気持ち　そして、悲しい気持ち
誰だって、もってる　捨てることはできない
俺だって、同じさ」
クノン: 「・・・・・・」
レックス: 「そうした気持ちに折り合いをつけて　人は、生きているんだ
苦しいのなら吐き出していいんだ　我慢しないで、さらけ出していいんだよ
君には、それを受け止めてくれる人がいるんだからさ？」
アルディラ: 「・・・・・・」
クノン: 「アルディラ・・・さま・・・」
: （パシッ！）
クノン: 「・・・っ！」
アルディラ: 「二度と、こんなこと許さないから・・・
許さない・・・っ　から・・・っ」
クノン: 「アルディラさま・・・
ごめんなさい・・・」