【夜会話】???(フェアVer.)

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紫蘭様

第6話 疑惑と不審の、黒いヤツ

フェア
「さて・・・明日にそなえて 早く寝ようかな
おやすみなさーい」
エニシア
「フェアさん!」
フェア
「こんばんは、エニシア」
エニシア
「よかった・・・また会えました」
フェア
「友達になるって約束したもの、当然だよ
まあ、自分の意志でここに来られないのは困りものなんだけど」
エニシア
「いいんです、それでも
こうして、お話できる相手ができただけでもうれしいんだもの」
フェア
「話し相手ならわたし以外にも、いるんじゃないの?」
エニシア
「いることはいるけど気楽におしゃべりができる人じゃないの
ギアンは、あくまで私の世話係なんだって言ってるから・・・」
フェア
「(・・・ギアン?)」
エニシア
「それよりも、ねえ 貴方が暮らしてる場所のお話を聞かせて」
フェア
「うーん、別に面白いものでもないよ?」
エニシア
「いいの! 普通の人が暮らす、普通のお話が聞きたいんだもの
ねえ、お願い」
フェア
「はいはい・・・退屈しちゃってもしらないからね?」
エニシア
「うんっ♪」
フェア
「(竜を拾う前の話なら別に問題ないよね?)」
エニシア
「すごいなあ・・・宿屋さんだなんて
私も、貴方の作ったお料理食べてみたいよ
おいしんだろうなあ きっと・・・」
フェア
「食べたかったらいつでも、ご馳走してあげるよ
ここじゃ無理だけど遊びにきてくれれば腕をふるうから」
エニシア
「うん」
フェア
「リシェルやルシアンもきっと、あなたのこと歓迎してくれるよ」
エニシア
「うん・・・」
フェア
「エニシア?」
エニシア
「ありがとう・・・でも、無理なの・・・」
フェア
「どうして!?」
エニシア
「夢の中で、こうして会うことはできても
本当の私は、ずっと遠い場所にいるの それに・・・
役目があるから そこから、離れることもできないの」
フェア
「!」
エニシア
「だから・・・ごめんね・・・」
フェア
「(そっか・・・だから、あんな話を聞きたがって・・・)
ねえ、泣かないでよ エニシア・・・」
エニシア
「そ、そうだったよね
泣かないって約束をして、友達になってもらったんだもの
約束は守らないとね」
フェア
「エニシア・・・」
(ドゥンッ)
フェア&エニシア
「!?」
フェア
「そんな、もう時間切れだなんて」
エニシア
「・・・・・・」
フェア
「そんな顔しないの! すぐにまた、会いにきてあげるから♪」
エニシア
「フェアさん・・・」
フェア
「話してないこともまだまだ、たっぷり残ってるしね
だから、楽しみにして待っててよね!」
エニシア
「はいっ、待ってます! 私、わくわくしながら待ってますから!!」

第8話 流れ三味線、はぐれ弾き

フェア
「さて・・・明日にそなえて 早く寝ようかな
おやすみなさーい」
エニシア
「なにか・・・ あったんですか?」
フェア
「え、別に・・・」
エニシア
「ウソをついてもダメ
顔を見たらわかります いつもの元気が全然ないんだもの」
フェア
「まいっちゃったな ははは・・・」
エニシア
「ねえ、私じゃあ 貴方の相談相手にはなれないですか?」
フェア
「え?」
エニシア
「やっとできた大切なお友達なんだもの
困っているのなら 力になりたいよ」
フェア
「エニシア・・・
(なんか心配させちゃってるみたいだし・・・
差しさわりのない程度だったら、相談してもいいよね?)」
エニシア
「大切な人たちを 危険な目にあわせてしまった・・・
それで、元気がなかったんだね」
フェア
「うん、自分じゃ気づいてなかったみたいだけど・・・」
エニシア
「・・・・・・」
フェア
「エラそうに守るとか 絶対責任はとるとか言ってたくせに
結局、周りに迷惑をかけてたんだ
情けないよ・・・」
エニシア
「そんなことないです!
フェアは情けなくなんかない」
フェア
「エニシア・・・」
エニシア
「本当に情けない人なら 失敗した時、すぐに逃げ出そうとするよ
でも、貴方はちゃんと失敗に向き合おうとしてるじゃない?」
フェア
「!」
エニシア
「責任を感じているのはそれだけ、貴方が優しいからだよ
それがわかる人なら 絶対に貴方のことを責めたりしないはず
きっと応援してくれる だから、元気を出して」
フェア
「・・・はははっ
不思議だね・・・エニシアにそうやってはげましてもらうと
なんか、本当に元気になっちゃう気がするよ」
エニシア
「あ・・・え、えーっと・・・
ごめんなさい・・・つい、興奮しちゃって 勢いだけで・・・」
フェア
「気にしないで 勢いだけなのはわたしも似たようなものだし
そういう勢いが今のわたしには
きっと、足りてなかったのかも?」
エニシア
「うん、そうかも・・・」
(ドゥンッ)
フェア&エニシア
「!?」
エニシア
「時間切れ、みたいだね」
フェア
「ごめんね、わたしを元気づけてもらうだけになっちゃって」
エニシア
「ううん、いいの 貴方には、いつも笑顔でいてほしいし
そうすれば、私も ずっと笑顔でいられる そんな気がするから」
フェア
「じゃあ、次は二人とも笑って過ごせるようにしなくちゃね?」
エニシア
「うんっ♪」

第12話 キミの言葉が、悲しくて・・・

エニシア
「・・・・・・」
フェア
「・・・エニシア?」
エニシア
「フェアさん? どうしてここに・・・」
フェア
「笛の音が聞こえたから必死になって捜したんだよ
あなたに会いたいって思いながらね」
エニシア
「そうだったんだ・・・うれしいよ・・・」
フェア
「だけど、よかった また、ここでこうして会うことができて
あれっきりだったらあんまりすぎるもの」
エニシア
「うん、でもね・・・
私たちを取り巻く状況は、なにひとつ変わらないんだよ?」
フェア
「・・・っ」
エニシア
「もう一度だけ会いたかったのはね
きちんと、貴方とお別れがしたかったからなんだよ」
フェア
「!?」
エニシア
「貴方とお友達になれて本当にうれしかったよ
外の世界の楽しい話をいっぱいしてくれて、笑わせてくれて
とても楽しかったよ ずっと、夢が続いたらいいなって思ってた」
フェア
「続くわよ!? 終わったりなんかするもんですか!?
夢が醒めたって その時は、また夢の続きを見ればいい
それだけのことだよ! そうでしょう!?」
エニシア
「できないよ・・・楽しい夢を見ることはもう、できないの
つらい現実を、知ってしまったから・・・」
フェア
「エニシア・・・」
エニシア
「みんなのためにも 私は「姫」のままでいなくちゃいけない
貴方だってそうでしょう?
大切な人たちのために 私たちと戦わなくちゃいけないんでしょ?」
フェア
「・・・っ」
エニシア
「出会わなければよかったなんて思ったりしないよ
貴方との思い出は大切にとっておくよ 絶対に忘れない
だから、お願いだよ フェア・・・
このまま、笑ってお別れしてください お願いだから・・・」
フェア
「エニシア・・・」
  • うん・・・
    フェア
    「うん・・・ わかったよ、エニシア
    わたしも絶対に忘れない あなたと会えて本当によかったと思ってる」
    エニシア
    「フェアさん・・・」
    フェア
    「泣かないって、わたしと約束したでしょう? そしたら・・・」
    エニシア
    「は、はい・・・っ おともだちに、なってくれる、って・・・」
    フェア
    「ええ、そうよ あなたがこの先も約束を守ってくれるなら
    わたしたちは、ずっと友達でいられるから
    たとえ・・・ 敵味方に別れて、争うことになったって」
    エニシア
    「・・・うん」
    フェア
    「それじゃ、エニシア 元気でね・・・」
    エニシア
    「フェアさんも お元気で・・・」
    フェア
    「さよなら エニシア!」
    (エニシア)
    ありがとう・・・ フェアさん あなたの笑顔が・・・ 大好きでした・・・
  • 絶対にイヤ!
    フェア
    「イヤよ・・・」
    エニシア
    「えっ?」
    フェア
    「絶対にイヤだって言ったのよ!
    こんなの、わたしは認めないんだから!」
    エニシア
    「困らせないで フェアさん」
    フェア
    「知るもんですか!? イヤなものは、絶対イヤなんだもん!!
    作り笑いしてうなずくなんて、わたしには絶対できないよ!
    エニシアだって本当は、そうなんでしょう!?」
    エニシア
    「え・・・」
    フェア
    「本当に、あなたはわたしとお別れしでも平気でいられるの?
    心の底から納得してわたしとお別れしようと思ってるワケ!?」
    エニシア
    「そんなこと・・・っ
    そんなこと、あるわけないじゃないっ!!
    私だって、本当は貴方とお別れなんかしたくないよっ!?
    納得なんかしてない! せっかく、仲良しになれたのに・・・
    ずっと、友達のままでいてほしいよ・・・っ」
    フェア
    「なら、あきらめないで わたしが、なんとかしてみせるから」
    エニシア
    「でも・・・っ」
    フェア
    「だいじょうぶ!
    わたしたちがこうして仲良くなれたんだもの
    きちんと話をすることさえできれば、きっと戦わなくてもすむ
    そういう方法が、絶対あるはずなのよ!」
    エニシア
    「本当に・・・?」
    フェア
    「うん、だからさ エニシアも、わたしに力を貸してほしいの
    お互いの仲間を説得して、戦わなくてもすむようにしよう
    そうすれば、きっとうまくいくはずよ?」
    エニシア
    「・・・うん」
    フェア
    「困った時は、またここで相談をすればいいんだし・・・
    二人でがんばろう!」
    エニシア
    「うんっ!」

第18話 はばたき、空へと突き抜けて

フェア
「偶然の出会いだって今までは思っていた だけど、もし・・・
「響界種」の能力が二人の心をつないでくれていたのなら
(姿を見せてよ エニシア・・・
無事でいるんなら今すぐに、わたしのことを呼んで!!)」
(フォオオン)
エニシア
「ひっく・・・っく、ひっく・・・」
あらあら・・・ やっぱ、予想どおり泣いてたね?
(フォオン)
フェア
「まったく・・・あなたって、やっぱり泣き虫だよね」
エニシア
「・・・フェア?
ホントに、ホントのフェアなの?」
フェア
「ええ、そうよ 前に約束したとおり
あなたが泣いてるから叱りにきてあげたの」
エニシア
「・・・っ!!」
フェア
「ちょ・・・ちょっとっ!?」
エニシア
「よかった・・・っ もう絶対会えないって思っ、てたのに・・・
きて、くれた・・・っ フェアが・・・きてくれた・・・っ
うわああぁぁんっ!!」
フェア
「エニシア・・・」
フェア
「・・・落ち着いた?」
エニシア
「うん・・・ゴメンね、また約束破っちゃった・・・」
フェア
「今回だけは特別 見なかったことにしといてあげる
ともかく、無事でなによりよ」
エニシア
「あれから、ギアンは私を部屋に閉じこめたきりだから・・・」
フェア
「じゃあ、今の様子を知ることも、逃げることも無理か・・・」
エニシア
「うん・・・だけど、なんとなく気づいてはいるの
ギアンは、きっと今 とても恐ろしいことを考えてるんだよね?」
フェア
「・・・・・・」
エニシア
「そう、なんだね・・・」
フェア
「ギアンは、自分自身を至竜へと変える儀式を行おうとしている」
エニシア
「!?」
フェア
「そうすることで幻獣界へと向かう門を開こうとしているの」
エニシア
「どうして・・・そこまでして・・・」
フェア
「・・・復讐のためだって
ギアンは、自分を見捨てた父親に復讐を果たすためだけに
今まで、ずっと生きてきたのよ」
エニシア
「ウソだよっ!? そんなの・・・」
フェア
「ウソじゃない!! わたしは直接、アイツの口から聞いたの!
あなただって・・・うすうすとは気づいていたんでしょ?
自分のことを話す時 ギアンは、笑みさえ浮かべるけれど
目だけは笑っていない 冷たく、とがった光を放っていることに」
エニシア
「・・・・・・」
フェア
「それに・・・ギアンは、あなたも犠牲にするつもりよ」
エニシア
「・・・っ!?」
フェア
「「至竜」になった〔リューム/ミルリーフ/コーラル〕が教えてくれた
エニシアの能力なら幻獣界まで行くことはできるけど・・・
引き替えに、おそらく命を落とすことになる」
エニシア
「そっか・・・
はじめから、無理な願いだったんだね?」
フェア
「エニシア・・・」
エニシア
「でもね、私はそれで死んじゃうかもしれないけれど・・・
ギアンの願いはかなうんだよね?」
フェア
「な・・・ッ!?
なに、バカなことを考えてんのよッ!?
死んじゃうんだよ!! わかってるのッ!?」
エニシア
「わかってるよっ!?
でも・・・ギアンは、私の命の恩人なんだよ!?
私を牢から助け出してくれて、今までずっと守ってくれたんだよ」
フェア
「だから、それはあなたの能力を利用するためで・・・」
エニシア
「そんなんじゃない!!
ギアンは、優しくしてくれてたよ・・・っ
ウソじゃ、ない・・・それだけは絶対、ウソじゃないよ・・・」
フェア
「エニシア・・・っ」
(ドゥンッ)
フェア&エニシア
「!?」
(ドゥンッ)
(ギアン)
ソウカ・・・ソウヤッテ、マタ・・・邪魔スル、気カ・・・
許さナイ・・・ユルサ、ないぞ・・・
(キュイ キンッ)
(ギアン)
これ以上、エニシアの心をかき乱すなァッ!!
(バァンッ バリバリバリ)
エニシア
「ギアン・・・っ」
ギアン
「裏切らせないよ・・・君だけは、絶対に私を裏切らせない・・・
裏切れるはずないッ!
だって、そうだろう? 私は、常に君の望みをかなえてきたんだよ
いつでも、なによりも優先して、君の願いをかなえてきたんだ?
それを忘れたと、君は言うつもりなのか!? なあ、エニシアッ!」
エニシア
「やめてえぇーっ!!」
フェア
「やめてッ、ギアン!!」
エニシア
「もう、いいよ フェア
ギアンの言いたいこと 私は、よくわかるもの」
フェア
「エニシア・・・」
エニシア
「甘えていたんだよ 私は・・・
ギアンの優しさを 当然のものみたいに誤解したままで
ずっと、今日まで甘え続けていたの
今まで拒まずにいたこと自体が、きっとその証拠だもの
ごめんね、ギアン ずっと気がつかなくて その代わり・・・
今度は、私が貴方の願いをかなえるためにお手伝いするから」
ギアン
「エニシア・・・」
エニシア
「・・・行こう?」
フェア
「ギアン・・・
わたしは、絶対に貴方には負けない だって・・・
このままじゃ貴方は、確実に不幸になるから」
ギアン
「なん、だと・・・?」
フェア
「わたしは貴方より賢くないけど、でもそれだけはわかる
だから、全力で止めてみせる!
貴方も、エニシアもこれ以上、悲しませたくないから!!」
ギアン
「なにを、バカなことを・・・」
フェア
「いいよ・・・信じたくないなら信じなくても
でも、わたしは勝手に貴方たちを助けるから!!
嫌われたっていい 恨まれたっていい でもね・・・
わたしは、最後まであきらめないから!
あきらめないから!!」

エンディング

ルシアン
「ありがとうございます また、お越しください」
フェア
「ギネマ鳥のオムレツにソレルクの甘辛煮込みあがったよ!」
リシェル
「はいはい、了解! お次は海賊風焼き飯ふたつ、よろしく!」
フェア&リシェル
「つ・・・っ つかれたあぁ・・・っ」
ルシアン
「二人とも、ほんとにおつかれさま」
フェア
「うん、ルシアンもおつかれさま」
リシェル
「にしても、最近のお昼時って、戦場そのものよねえ
ちょっと前まではお客が列を作るなんてありえなかったもん」
ルシアン
「それはそうだよ! なんたって、今のフェアさんは
「ミュランスの星」が認めた、帝国最年少の有名料理人だもの
噂を聞いて、遠くから食べに来る人たちもいるくらいなんだよ」
リシェル
「有名料理人ねぇ・・・」
フェア
「そんなのは、他人が勝手に騒いでるだけよ
わたしはただ、ずっとこの町でおいしい料理を作り続けて
もっと、みんなに喜んでもらいたいだけ それだけでいいの」
リシェル
「けど、原因はともかく 人手不足は深刻よ!?」
フェア
「たしかに、みんなにお手伝いしてもらうのも限度はあるよねえ」
リシェル
「そもそも、あたしたち無償で手伝ってあげてるんだからね?
これ以上、こき使うんなら、本当にお給金要求しちゃうわよ?」
フェア
「ぐ・・・っ」
ルシアン
「まあ、お給金の話は冗談ってことにしても
ねえさんも僕も毎日確実に手伝えるってわけにはいかないし
アルバイトを雇うのは考えたほうがいいかも」
フェア
「うーん・・・わかってはいるけど でもねえ・・・
ウチの仕事はきついし 人間以外の常連だってたくさんいるから
募集をしたところで人が来てくれるか不安だなあ・・・」
ギアン
「・・・ならば、ボクを雇ってはくれないか?」
フェア
「え???
ぎ、ギアンっ!?」
ギアン
「そこまで大げさに驚く必要はないだろう」
リシェル
「そりゃ驚かないほうがおかしいってば!?
なんで、あんたが今頃のこのこ顔を出したりするワケよ!?」
ルシアン
「そうだよ!? 貴方は、あの後 元の姿に戻って
エニシアたちと一緒に幻獣界へと旅立ったはずじゃあ・・・」
ギアン
「ああ、たしかにそのとおりだよ
カサスや子供たちも無事に仲間のもとへ帰してやれたし
なんとかエニシアも母親との再会を果たすことができた
共に暮らすことは無理だったがな」
フェア
「そっか・・・」
ギアン
「心配はいらない 彼女は、ボクよりもずっと心の強い娘だ
今では「隠れ里」で至竜と一緒になって勉強に励んでいる
こちらの世界で暮らしていけるよう強くなるためにね」
フェア
「・・・ってことは!?」
ギアン
「そうさ、ボクらはこの世界で生きていくことを選んだんだよ
だから、こうして帰ってきたんだ」
リシェル
「ふーん・・・なるほどねえ」
ルシアン
「だけど、本当にそれでよかったの?
こっちの世界で暮らすってことは
貴方が重ねてしまった過ちと向き合っていくことなんだよ?」
ギアン
「・・・・・・」
ルシアン
「面と向かって断罪するつもりは、僕たちにはないけれど
そんなことしなくても貴方は、きっと自分を責め続けると思う
なのに、どうして自分から苦しむ道を選ぶって決めたの?」
ギアン
「悔やむ気持ちはどこにいたって消えないからさ
例え、別の世界に逃げたって、自分は自分のままだから」
ルシアン
「・・・・・・」
ギアン
「だから、ボクは決めたんだ
逃げるのではなく受け入れて、そして乗り越えようって
そう・・・ フェア、君のようにね」
フェア
「は?」
ギアン
「長い間、ボクは迷って愚かな過ちを繰り返してしまったけれども
君と出会ったことで思い知らされたんだ
どんな境遇であろうとまっすぐに生きようとすることはできる
歪んでしまうことへのいいわけにはならない そして・・・
そういう気持ちで生きることこそが本当の強さだってね」
フェア
「そ、そんな・・・ わたしは、別にそんなたいしたこと・・・」
ギアン
「気どらず、そう言えること自体が、君の強さなんだろうな
憧れてるよ 悔しいけどね」
フェア
「・・・・・・」
リシェル
「ねえねえ、ルシアン これは強敵出現よ?」
ルシアン
「あのね・・・ 僕は、別にそういうつもりじゃ・・・」
リシェル
「そんなこと言ってると間違いなく、負け犬になっちゃうわよぉ?
あの子、ああ見えて押しの強い相手にはめちゃ弱いからねえ
幼馴染みだからって油断してたら・・・」
ルシアン
「もぉーっ、ねえさんのバカあぁーっ!!」
フェア
「ちょっと、ルシアン なにをいきなり大声出してるのよ?」
ルシアン
「な、なんでもないよ! あははははは・・・」
フェア
「???」
リシェル
「でもさ、ギアン あんたの決意はまあわかったけどさ
だからって、なんでここでアルバイトする必要があるワケ?
お金とか、しっかりもってそうなのにさ」
ギアン
「クラストフ家の財産は正当な手段で得たものではないからね
できれば、むやみに頼りにはしたくない それに・・・
自分で食べていくのに必要なお金は、やはり自分で稼ぎたいんだ
そうすることで多分ひきずってきた過去と決別できると思うし」
フェア
「わかったよ、ギアン そういうことだったら私も協力してあげる
明日から、さっそくお手伝いよろしくね?」
ギアン
「こちらこそ、よろしく」
リシェル
「あーあ・・・ 言わんこっちゃない」
ルシアン
「いいもん、別に・・・」
ギアン
「そう心配しなくても抜け駆けはしないよ?」
ルシアン
「!?」
ギアン
「君もボクも、おそらくここからが本当の勝負になるだろうしね」
ルシアン
「・・・負けませんよ?」
ギアン
「ああ、望むところさ」
リシェル
「やれやれ・・・ 知らぬは当人だけ、か」
フェア
「???」
ギアン
「ああ、いけない! 肝心な用事を忘れてしまうところだった」
フェア
「用事?」
ギアン
「出張依頼だよ 君の料理が恋しくてたまらない人たちが
是非、今夜の宴席で腕を振るってほしいとご所望なんだよ
無論、君たち二人やこの町にいる仲間も招待したいそうだ」
ルシアン
「え、ボクたちも!?」
ギアン
「ああ、遅くなったが これは、それぞれの新しい門出を祝う
そのためのパーティなのだからね」
リシェル
「やったぁーっ♪」
フェア
「もぉ・・・しょうがないなあ まったく・・・
そういうことなら いかないわけにはいかないじゃない」
リシェル
「じゃあ、あたしたちさっそく、みんなに知らせてくるわね
いくわよ、ルシアン!」
ルシアン
「うんっ!」
フェア
「さーて、と・・・ とびっきりの食材を用意しなくちゃね
悪いけど、買い出しつきあってくれる?」
ギアン
「ああ、荷物持ちと財布役は任せてくれ
今日だけは特別だ」
フェア
「うんうん、それじゃあ張り切って、ごちそう作っちゃうぞーっ♪」
(ギアン)
正直に言えば・・・今でも、不安にはなるよ
自分がしてきたことの重さは、誰よりもよくわかっているから
いつまた、押し潰されて暗い気持ちに支配されるか こわくて、たまらないよ
だけど―――
君のことを思うと勇気がわいてくるんだ
どうしようもないボクを闇の中から引っ張り出して叱ってくれた君・・・
嫌われたくないから 心配をかけたくないから
顔を上げていようって思う 負けたくないって思えるんだ
こんな弱気を口にしたら きっとまた、怒られるけど
それでも、今は・・・君のすぐ側にいたい・・・
だからボクは、人としてこの世界で生きていくよ
フェア 君がまぶしく笑っているこの世界で・・・

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