【夜会話】アロエリ(フェアVer.)

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不断様

第5話 今はもう、戻れない場所

フェア
「どうしたの? わざわざ、あなたから会いに来るなんて」
アロエリ
「・・・・・・」
フェア
「てっきり、このまま知らん顔でいるのかと思ってたんだけど」
アロエリ
「み、みくびるなッ!?
オレだって、自分が愚かだったことぐらいわかっているぞッ!」
フェア
「じゃあ、それでいいよ 無理に謝らなくてもね」
アロエリ
「そ、そういうワケにはいくものかッ!?
きちんと謝罪せねば、オレの気がすまぬ!」
フェア
「だから、いいってば」
アロエリ
「よくないッ!」
フェア
「いいってば!」
アロエリ
「謝らせろッ!」
フェア
「しつこいわよ!?」
アロエリ
「よくないッ!」
フェア
「あーっ、もぉっ!?」
フェア&アロエリ
「はぁ、はぁ、はぁっ はぁ・・・っ」
フェア
「この・・・っ ガチガチ頭・・・っ」
アロエリ
「そっちこそ・・・っ」
フェア
「ねえ、アロエリ」
アロエリ
「・・・なんだ?」
フェア
「貸し借りとかそういうのは関係なしでいいからさ
わたしたちにもコーラルを守らせてよ」
アロエリ
「え・・・」
フェア
「あの子を拾って色々面倒なことも増えちゃったけど
わたし、それ以上に楽しく過ごしてるの
わたしたちにとってはあの子はもう、家族みたいなものなの」
アロエリ
「フェア・・・ お前・・・」
フェア
「人間がどうしても信用できないのなら、そのままでもいい
だから・・・」
アロエリ
「お断りだッ!」
フェア
「アロエリ・・・」
アロエリ
「信用もできぬ相手とねぐらを共にできるか。
だから・・・ その、なんだ・・・
とりあえず、今だけは信用してやるッ!!」
フェア
「え?」
アロエリ
「とりあえずだからな!」
(バッサ! バッサ! バッサ! バッサ!)
フェア
「はは、あはは・・・っ」
とりあえず・・・問題解決かな?

第6話 疑惑と不審の、黒いヤツ

フェア
「でも、意外だったなあ アロエリがアルバを止めるなんて・・・
あなたの性格なら、むしろイケイケってけしかけそうなのに」
アロエリ
「それでは、まるでオレが、ボアレス族みたいじゃないか!
興奮したら止まらないあの連中ほど、オレは無分別ではないッ!」
フェア
「充分、突っ走ってると思うんだけど・・・」
アロエリ
「オレがあいつを止めたのは、戦士たる魂を感じとったからだ」
フェア
「戦士たる魂?」
アロエリ
「ああ、そうだ 見習いとはいえど、あの少年剣士には
戦士として必要な素養が、しっかりと備わっていた
おそらくは、偉大な勇者が、すぐ身近にいたんだろうな」
フェア
「その勇者の影響を受けたってこと?」
アロエリ
「だとすれば、あいつもやがて勇者と呼ばれるようになるかもな
つくづく、ニンゲンにしておくには惜しい」
フェア
「ははは・・・」
今の話を聞いたらアルバは、いったいどんな顔をするかな?

第7話 お魚たずねて、秘密基地

アロエリ
「どうも、後手後手に回ってしまってるな
まあ、計画をひとつ潰せただけでもよしとすべきなのだが」
フェア
「別に今回の目的は戦うことじゃなかったわけだしさ・・・」
アロエリ
「甘いッ!
こうしている間にも敵は着々と次の手を用意しているのだぞ
ぼやぼやしていて、取り返しがつかなくなったらどうする!」
フェア
「それはまあ そうだけどさ」
アロエリ
「こんな時、兄者がいてくれたなら、どれほど心強いことか・・・
貴様なんかよりも、的確な判断を下しているだろうに」
フェア
「・・・・・・」
アロエリ
「な、なんだ? なにをジロジロと見ているんだ???」
フェア
「なんだかんだ言ってアロエリってさぁ
要はすこしでも早くお兄ちゃんに会いたいだけなんじゃないの?」
アロエリ
「な・・・ッ!?」
フェア
「ほら、図星だ!」
アロエリ
「ば、バカ者ッ!? くだらない言いがかりをつけるなッ!?
オレはただ、今後のことを心配しているからこそ・・・」
フェア
「素直じゃないなあ 別に、恥ずかしがるようなことないじゃない?」
アロエリ
「う、うるさぁーいッ!」
フェア
「あらら・・・ 行っちゃった・・・」
でも早く、合流できるほうがいいのは、たしかだよね・・・

第8話 流れ三味線、はぐれ弾き

フェア
「どういうことなの? ポムニットさんをここに近づけるなって」
アロエリ
「戦う力のない者を 戦場に立たせるべきではない
今日のことで、お前もよくわかっただろう
あれが、敵の本性だ 今までのやり方こそがぬるすぎだったんだ」
フェア
「それは・・・」
アロエリ
「足手まといになるだけですむならいい だがな・・・
取り返しのつかぬことになった時、お前に責任がとれるのか?」
フェア
「・・・っ」
アロエリ
「とれるはずがあるまい オレだって、同じだ
だからこそ、彼女にはここで手をひかせるべきだろう」
フェア
「わかってる・・・ でも、わたしには強制なんてできないよ
どうするか決めるのはポムニットさん自身じゃなきゃダメだよ
そうでしょ!?」
アロエリ
「バカか、貴様ッ!? それでは、なんの意味もないだろうが!!
お前の口から言わねば彼女は、残ると言うに決まっているッ!!」
フェア
「わたしだってホントはすぐにも止めたいよ! だけど・・・
わたしも、あなたも自分の意志で決めてここにいるんだもの
ポムニットさんだけの気持ちを無視するるのは身勝手だよ・・・」
アロエリ
「それで、彼女が命を落としたとしてもか?」
フェア
「・・・・・・」
アロエリ
「ふんっ、もういい! 勝手にしろッ!」
アロエリは正しいと思う だけど、わたしは・・・

第10話 想い、途切れることはなく

アロエリ
「オレなんかに構っていてもいいのか?
ポムニットのこと まだ、解決してはいないのだろう?」
フェア
「ポムニットさんにはリシェルとルシアンがついててくれてる
だから、わたしはあなたについていてあげようかなって」
アロエリ
「いらぬ世話だ」
フェア
「そう?
どう見ても、あなた落ちこんでるようにしか見えないけど?」
アロエリ
「あ、当たり前だッ!?
いくら決別を決めたといっても、そう簡単に心の整理がつくか!
ずっと・・・っ 尊敬していた・・・んだぞ・・・っ」
フェア
「あ、アロエリ!?」
アロエリ
「兄さまが、御使いになったから・・・っ 戦士、だったから
わたしも、戦士にっ なったんだ・・・っ!
おんなじゃ、無理っていわれ、たから・・・ 意地、はって・・・っ
おとこにも、負けない つよくなって・・・っ だから・・・っ
うう・・・っ、うっ うえええぇぇぇっ!」
フェア
「いいんだよ・・・ つらい時は、無理にガマンしなくても
泣くのは恥ずかしいことじゃないもの」
アロエリ
「うわああぁぁんっ!! にいさまっ、どうして うわああぁぁっ!!」
フェア
「アロエリ・・・」
アロエリ
「・・・・・・」
フェア
「・・・・・・」
アロエリ
「・・・・・・(おまえが・・・:音声のみ)」
フェア
「え?」
アロエリ
「お、お前が・・・ 悪いんだからな・・・
泣くつもり、なんてなかったのに・・・
あんなとこ 見られたくなかったのに・・・」
フェア
「気にすることないよ みんなには、内緒にしてあげるし、ね?」
アロエリ
「・・・ありがとう」
フェア
「え?」
アロエリ
「なんでもないっ!!」
フェア
「・・・・・・」
これで、すこしは元気を出してくれたらいいんだけどな・・・

第11話 うつろなるもの、来たりしもの

アロエリ
「ニンゲンに召喚された同胞が、ああした実験に用いられることは
郷の者たちから何度か聞かされてはいた」
フェア
「・・・・・・」
アロエリ
「ことに幻獣界の住人はニンゲンより強い肉体をもっているからな
研究のための素材 消耗品としての労働力 殺し合うための兵士
はるかな昔から重宝されていたらしい」
フェア
「知らなかった、じゃ すまないよね・・・
実際、町外れの農園で働いている召喚獣たちがいるってことも
わたし、当たり前だと思っていたし・・・」
アロエリ
「フェア・・・」
フェア
「コーラルにもね 言われたことがあったんだ
いやがってる召喚獣をどうして、人は帰してやらないのか、って
でも、そうしなくちゃわたしたちの生活は成り立たないもの
だから・・・ わたしは・・・」
アロエリ
「そのとおりだな
ニンゲンは召喚術の力におぼれ、それが当然だと思い続けてきた
際限なき欲望を満たすために、他の世界から様々なものを奪った
他の世界へと寄生することによって、安易に繁栄してきたのだ!」
フェア
「・・・っ!」
アロエリ
「だがな・・・ それは、貴様だけの罪ではあるまい?」
フェア
「・・・え?」
アロエリ
「最初に犯した間違いが時を経て、深き溝へと変わってしまった
時は巻き戻せぬし 失われた同胞たちは二度と帰らぬだろう
だがな・・・
フェアよ 貴様は今を生きている
ここから先を変えていけるだけの時と命を持ってるんだぞ!?
今、貴様は罪を知った その苦さへと苦しんで報いをすでに受けた
ならば、次は改めろ!
できることが限られていようとも、なにもしないよりはいい
それだけでもいいんだ」
フェア
「・・・・・・
わかった、アロエリ 約束するわ・・・
できる限りのことを精一杯、改めるよ!」
アロエリ
「うむ・・・」
フェア
「だけど・・・
それでも、クラウレは復讐しないと、気がすまないんだろうね」
アロエリ
「ああ、愚かなことだ
大水を防ぐ堤のために 山の木の全てを刈れば 山津波を招くだけ
兄者は、きっとそれを忘れてしまったんだ」
フェア
「・・・・・・」
本当にバカだよ・・・ にいさまは・・・

第13話 思い願うこと、貫くこと

選択不可

第14話 来訪者たち、彼方より

アロエリ
「母に会いたい・・・
姫の願いが、まさかそれだけの事だったなんて・・・
これでは、とても憎みきれないじゃないか・・・ッ」
フェア
「アロエリ・・・」
アロエリ
「この世界に来てから生まれた世代であるオレにだって
故郷に帰りたいと願う同胞の気持ちは痛いほどにわかる
追われ、迫害されて逃げてくる姿ばかりを見続けてきたから
そんな彼らの願いを どうしても、オレは否定しきれないんだ
オレは、御使いなのに なのに・・・ッ」
フェア
「いいんじゃないかな 別に、それでも」
アロエリ
「え?」
フェア
「否定できないんなら それでいいじゃない 立場を気にしてさ
無理に苦しんでまで 気持ちを捻じ曲げる必要なんかないわよ」
アロエリ
「ならば・・・ 貴様は、オレに裏切れというのかッ!?
兄者と同じく裏切って あちら側につけばいいとでもいうのか!?」
フェア
「そうしたいんなら そうしたら?
でも、あなたはそれが出来ないから
こうやって、わたしにに当たってるんでしょ?」
アロエリ
「・・・ッ!?
そうか・・・ やつあたり、なんだな これは・・・
すまない・・・」
フェア
「まあ、むしゃくしゃする時は、誰にだってあるからね
あなたがためらってる理由もギアンでしょ?」
アロエリ
「では、貴様も同じか?」
フェア
「うん、わたしだってエニシアたちのことは助けてあげたいよ
でも、ギアンがなにかたくらんでいる現状じゃ 信用はできないもの
せめて、ギアンの狙いだけでも、知る方法があればなあ・・・」
アロエリ
「兄者なら、それを知っているのかもしれないな・・・」
フェア
「クラウレが?」
アロエリ
「ああ、兄者が御使いの立場を捨てて、ギアンの腹心になったのも
おそらく、そのあたりに理由があると、オレは思っているんだ」
フェア
「なるほどなね・・・
でも、そうだとしても聞きだすのは・・・」
アロエリ
「難題に違いあるまいな」
フェア&アロエリ
「はぁ・・・っ」
でも、それが唯一の突破口になるのかもしれない・・・

第16話 相談イベント

第16話 相談イベントに掲載

第18話 はばたき、空へと突き抜けて

アロエリ
「・・・・・・」
フェア
「そんな格好でいるとカゼひいちゃうよ?」
アロエリ
「鍛え方が違うのだ いらぬ心配をするな」
フェア
「はいはい・・・」
アロエリ
「よく、オレがここにいるとわかったな?」
フェア
「なんだかんだいって つき合いもそれなりに長くなってるからね
部屋にいないんなら多分、ここだろうって思ったの」
アロエリ
「そうか・・・」
フェア
「休まなくていいの?」
アロエリ
「気持ちが途切れてしまいそうなのがこわくてな
それに、どうしても夜明けを見ておきたくなったんだよ」
フェア
「夜明け、か・・・」
アロエリ
「夜が明ける寸前 世界は蒼くて深い影に沈んでいく・・・
だが、明けの光明が差した、その瞬間に
影は魔性の力を奪われ 世界は、黄金色の力に満たされていく
その一瞬の情景が オレはたまらなく気に入っているんだ
新たな活力が身体中にみなぎってくるような気がするんだ・・・」
フェア
「へえ・・・」
アロエリ
「明日で、全てが終わるのだな」
フェア
「うん、そうだね
結末がどう転ぶのかは出たとこ勝負だけどね」
アロエリ
「そんなこと、笑ってよく言えるものだな? まったく・・・」
フェア
「笑いとばさなきゃやってられないよ 普通は・・・」
アロエリ
「え?」
フェア
「わたしだって、結構不安ってこと」
アロエリ
「あ・・・」
フェア
「眠れないの みっともない話だって思うけど
明日のことを考えると どうしても、じっとしてられないの」
アロエリ
「・・・こわいのか?」
フェア
「うん、こわい・・・ こわくて、ホントは逃げちゃいたいよ
戦うのがイヤだとか、そういうのじゃないよ でもね・・・
今度だけは、絶対に負けちゃダメだってわかってるから
やり直しがきかないことだってすごくわかってるから」
アロエリ
「フェア・・・」
フェア
「今までだって、絶対に負けないって気持ちで戦い続けてきたよ
どんなにうちのめされても 何度でも立ち向かっていけばいい
あきらめない限りは負けたってことにはならないんだって」
アロエリ
「そのとおりじゃないか 貴様の言ってることは別におかしくないぞ」
フェア
「うん、でもね・・・ 気づいちゃったんだよ
一度きりしかできない勝負だって いっぱいあるんだってことに」
アロエリ
「あ・・・」
フェア
「みんなが病気で倒れたあの時 思いしらされちゃったんだ・・・
お母さんが助けてくれたからみんな無事だったけど
じゃなきゃ、きっと取り返しのつかないことになってた
負けちゃいけない戦いで わたしはギアンに負けたんだ
助けてもらえたから どうにかこうしてここにいられるんだ」
アロエリ
「・・・っ」
フェア
「明日の戦いにはたくさんの人たちの願いがかけられてる
結果次第で、みんなの未来が決まってしまう やり直しはできない
そう思ったら、わたし わたしは・・・っ」
アロエリ
「だが、それでも貴様は負けちゃいないだろッ!?
あきらめて、終わりにしてしまったわけじゃないんだろう!?」
フェア
「アロエリ・・・」
アロエリ
「負けたと思ったのなら なぜ貴様はこうしてこの場所にいるのだ
ギアンの誘いを蹴ってなおもアイツと戦う道を選んだのだ!?」
フェア
「!」
アロエリ
「わかってるはずだ 誰より、貴様自身がな
負けちゃいないんだ まだ、貴様は・・・
納得がいかないから・・・ あきらめられないから立ち上がったんだ!」
フェア
「うん・・・」
アロエリ
「ならば、やることはたったひとつだろう?」
フェア
「戦って、勝つ・・・ 最後の最後まで、絶対あきらめない・・・」
アロエリ
「ああ、そうだ それでいいんだよ
戦うと決めたのなら その思いを最後まで貫くしかないんだ」
フェア
「だけど・・・」
アロエリ
「心配するな
オレやみんなが、貴様を支えてやる
納得いくまで戦えるように何度だって力を貸してやる」
フェア
「アロエリ・・・」
アロエリ
「だから、負けた時のことなど 考えるのはやめてしまえばいい
オレたちは、勝つまで戦い続けるんだからな」
フェア
「そうだよね・・・やっぱ、それしかないもんね・・・
ありがとう、アロエリ 貴方のおかげで、またがんばれそうだよ!」
アロエリ
「別に、礼を言われるようなことじゃない
オレはただ、貴様が今までしてきたことを真似てみただけだ」
フェア
「わたしの真似?」
アロエリ
「はぁ・・・やはり、自覚してなかったか・・・」
フェア
「???」
アロエリ
「わかってないのなら 別に、わかろうとしなくたっていい」
フェア
「うーっ、説明してくれなくちゃ気になるじゃないのよぉ^っ!?」
アロエリ
「うるさいッ! そんな恥ずかしいこと真顔で言えるもんかッ!?」

エンディング

ルシアン
「ありがとうございます また、お越しください」
フェア
「ギネマ鳥のオムレツにソレルクの甘辛煮込みあがったよ!」
リシェル
「はいはい、了解! お次は海賊風焼き飯ふたつ、よろしく!」
ミルリーフ
「果物畑のパンケーキ 盛りつけできたよ」
フェア
「上出来、上出来 仕上げもできる?」
ミルリーフ
「クリームとチョコを半分ずつに、ナッツを散らすんだったよね
まかせてっ♪」
フェア&リシェル
「つ・・・っ つかれたあぁ・・・っ」
ルシアン
「二人とも、ほんとにおつかれさま」
フェア
「うん、ルシアンもおつかれさま
ミルリーフもね?」
ミルリーフ
「えへへっ♪」
リシェル
「にしても、最近のお昼時って、戦場そのものよねえ
ちょっと前まではお客が列を作るなんてありえなかったもん」
ルシアン
「それはそうだよ! なんたって、今のフェアさんは
「ミュランスの星」が認めた、帝国最年少の有名料理人だもの
噂を聞いて、遠くから食べに来る人たちもいるくらいなんだよ」
リシェル
「有名料理人ねぇ・・・」
フェア
「そんなのは、他人が勝手に騒いでるだけよ
わたしはただ、ずっとこの町でおいしい料理を作り続けて
もっと、みんなに喜んでもらいたいだけ それだけでいいの」
ミルリーフ
「それじゃ、ぐるめのオジサンとの約束はどうするの?
本格的に料理の修行にきなさいって、手紙で誘われてるでしょ?」
フェア
「うん、悪いけどもうしばらく、待ってもらうつもり
あの騒ぎで壊れた町を元どおりにするために働いてる人たちに
おいしいゴハン食べてもっと、がんばってもらいたいからね」
ミルリーフ
「そっか・・・」
フェア
「まあ、とにかく今はひと休みにしましょ
夜になったら、また大忙しなんだから」
リシェル&ルシアン
「はーい・・・」
フェア
「きゅうぅぅ・・・っ」
アロエリ
「やれやれ・・・わざわざ様子を見にやってきてやれば
そのふぬけきったザマはなんだ?」
フェア
「そんなこといったってしょうがないじゃない
昼時の混雑が終わってやっと、休憩に入ったとこなんだし・・・」
アロエリ
「しかし、忙しいぶん もうかってもいるのだろう?
ヒマをもてあますよりずっと、よいことだ」
フェア
「そうは言うけどねぇ モノには限度ってあるじゃないの
休日返上で、朝から晩まで働きっぱなしだったら
ふらふらになるのが当たり前だってば」
アロエリ
「情けない・・・ 少し前の貴様だったら宿屋の運営に加えて
戦いまでこなしていたというのに・・・
やはり、身体がなまっているのではないか?」
フェア
「うう・・・っ たしかに、あらためてそう言われてみると
このところ、町の外に出てない気もするなぁ」
アロエリ
「・・・よし ならば、今から外に出かけるとしよう!」
フェア
「はぇ!?」
アロエリ
「よい風に吹かれれば 貴様の、さえないその表情も
すこしは、しゃきっとするだろうからな!」
(バサッ バサッ バサッ)
フェア
「ち、ちょっと!? 猫の子みたいに、襟を掴まないでーっ!?」
フェア
「・・・・・・」
アロエリ
「・・・どうだ? 無理矢理でも、来てよかったろう?」
フェア
「うん、そうだね・・・ 外の風にあたるだけで
こんなにも疲れがとれるなんて思いもしなかったよ」
アロエリ
「風には、凝り固まった悪いモノを吹き飛ばす力があるんだ
水は洗い流し、火は焼きつくし 土はのみこむことで
邪悪なモノを清めると フバースの呪い師がそう言っていた」
フェア
「ふーん・・・ま、難しいことはともかくとして
ありがと、アロエリ! なんか、元気でたよ」
アロエリ
「別に・・・無知な貴様を見かねただけだ」
フェア
「もぉっ、相変わらず素直じゃないよねえ」
アロエリ
「なにか言ったか?」
フェア
「ううん、なーんにも♪」
(ザアァ・・・)
フェア
「あのね・・・」
アロエリ
「なんだ?」
フェア
「どうして、アロエリはこっちの世界に戻って来ようと思ったの?
クラウレたちと一緒にメイトルパに残ってもよかったのに」
アロエリ
「なにかと思えばそんなことか
何度も言っただろう オレは「御使い」だと
御子さまやリビエルを放りだして自分だけのんびりとできるか」
フェア
「だけど、それでもちょっと心配かな」
アロエリ
「だから、なにが?」
フェア
「ほら、アロエリもお年頃なんだしさ
あっちの世界なら同族もいっぱいいただろうから
きっと、アロエリを幸せにしてくれる相手だって
見つかったんじゃないかって思うんだけどなぁ」
アロエリ
「い、いらぬ世話だぞッ!? まったく・・・」
フェア
「ゴメン・・・でも、私も女だしこんなだからさ
不安とか、なんかわかる気がするのよ 強がったってさ
やっぱり、ずっと一人じゃさびしいし 不安だし・・・」
アロエリ
「・・・・・・
正直に言えばな そう思ったりする時もあるにはあるさ
しかし、オレは「御使い」という生き方を選んだんだ
後悔はしていないし、この先もしたくない そのためにも・・・
強く、誇り高く生きていこうと思っているんだ」
フェア
「アロエリ・・・」
アロエリ
「まあ、もし仮にどうしても巣作りがしたくなった時は
こちらの世界でつがいの相手を見つけるさ」
フェア
「それって・・・人間と一緒になるってこと!?」
アロエリ
「そこまで驚くこともないだろう
メイトルパの亜人は原初の「ヒト」>が生き抜く力を求めて
幻獣や聖獣らと結びつくことで生誕した種族なのだしな」
フェア
「じゃあ、亜人も「響界種」ってことなの?」
アロエリ
「そういった考え方そのものがないんだ メイトルパにはな
もしも、ギアンがメイトルパで産まれ育っていたのなら
あのようなことにはならなかっただろう
たとえ話をしても意味のないことではあるのだがな」
フェア
「そうだね・・・」
アロエリ
「ともかく、驚く必要はないことは理解できたか?」
フェア
「ううん、私が驚いたのはそこじゃなくて
あんなに、人間を嫌っていたあなたがそう言ったからよ」
アロエリ
「ニンゲンにも色々いることがわかったからな
吐き気がするような不快な連中もいるが その反対に
心から尊敬したり信用できる人物もちゃんといるんだ」
フェア
「そっか・・・うん、そうだよね」
テイラー
「おい、本当に最後まで顔も見せずに行くつもりなのか?」
ケンタロウ
「ああ、親がなくとも子は育つ、ってな
アイツも、想像以上にいっちょまえに育ってやがったからなあ
オレ様がいなくたってなにも問題はねーさ」
テイラー
「だが、いくらなんでも薄情すぎやしないか?
次はいつ、戻ってこられるかも知れんというのに・・・」
ケンタロウ
「約束がよ、いまだに守れてねーんだよなあ
エリカの病気を治して 家族みんな、揃って一緒に暮らしていく
その方法を見つけるまでは、オレ様は帰れねえんだわ」
テイラー
「だが・・・」
ケンタロウ
「バカとかクソとかロクデナシってのは慣れちまったけどよ
ウソつき、って呼ばれるのだけはカンベンだからな」
テイラー
「そうか・・・」
ケンタロウ
「つーわけだからよ 悪いが、もうすこし世話を頼むわな」
テイラー
「ふん、言われずともわかっておるわ
あの人の居場所は二度と、誰にも荒らさせはせんよ
だから、とっとと約束を果たして戻ってこい!!」
ケンタロウ
「おうよッ!」
アロエリ
「・・・おい?」
フェア
「・・・・・・」
アロエリ
「・・・あ」
フェア
「すぅ・・・っ くぅ・・・っ」
アロエリ
「眠ってしまったのか
まだ、話すことはたくさんあったのに困ったヤツめ・・・
・・・らーららーらーらー らーらら、らららーらーららー
らーららー・・・」
寂しくなんかないさ この世界には大切な仲間たちがいてくれる
そして、こんなオレを思ってくれる、妹も・・・
だから兄様、心配はいらないよ
私はもっと高く 遠くまで飛んでいくから・・・

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