茨の棘

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スターライト様

第15話 ひとつの答え

イベントバトル後
オニビ
「ビビ?」
ヘイゼル
「う・・・く・・・っ」
オニビ
「ビビビーッ!?
ビビーッ! ビビッビビ~ッ!!」
ベルフラウ
「はいはい、なあに? そんなに慌てて・・・
・・・!?」
カイル
「こいつ! 暗殺者たちを指揮してた・・・」
スカーレル
「「茨の君」ヘイゼル
組織じゃ、その名で呼ばれてたコよ」
ヤッファ
「ご同輩ってことか?」
スカーレル
「まあ、ね」
アティ
「足が折れてます・・・ それに、他にもあちこち傷ついて・・・」
ヤード
「多分、それが原因で置きざりにされたのでしょうね」
ソノラ
「そんな、ひどい・・・」
ヤード
「無色では、これが当然なんですよ、ソノラ」
ファルゼン
「・・・・・・」
アルディラ
「息は、まだあるようね?」
クノン
「はい、今ならまだ手当てが間に合うと思いますが・・・」
アティ
「あの・・・」
ベルフラウ
「いちいち、確認をとらなくたってわかってますわよ?」
カイル
「いまさら、ゴタゴタ文句をつけるヤツはいねえよ」
キュウマ
「ええ、そのとおりです」
フレイズ
「ラトリクスまでは私が運びましょう」
アティ
「ありがとう、みんな」
スカーレル
「・・・・・・」
アティ
「それで、彼女の様子はどうですか?」
クノン
「外傷についての処置はすべ完了しました
あとは、体力の回復を待つだけです
しかし・・・」
アティ
「なにか、問題でも?」
クノン
「意気を回復して以来 患者が、一言も口を聞こうとしないのです
治療を拒んだり、抵抗するわけでもないのですが、本当に無反応そのもので・・・
まるで・・・ 人形そのものなのです かつての、私のように」
アティ
「・・・・・・」
クノン
「怪我の回復は、本人の治りたいという欲求に左右されるものです
ですから・・・」
アティ
「わかってますって そのために、私は面会に来たんだもの
きちんと事情を説明して、彼女の不安を消してみせますよ」
クノン
「よろしくお願いします」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「お邪魔しますね?」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「(本当に、クノンの言ったとおり)
傷の具合はどう? まだ、痛むところとかありませんか?」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「なにか欲しいものは? 果物とか、本とか 頼まれれば、持ってきますけど?」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「(まいったなあ・・・)」
ヘイゼル
「捕虜・・・」
アティ
「(え、えーと・・・)」
ヘイゼル
「捕虜なんでしょう? 私は・・・」
アティ
「!?」
ヘイゼル
「回りくどいことはキライなの・・・
聞きたいことがあるのなら、さっさと済ませたらいいじゃない?
拷問でも、クスリでも 好きに使えばいいわ
慣れっこだし・・・」
アティ
「別に、私はそんなつもりは・・・」
ヘイゼル
「人質にするつもりなら無駄な考えよ
私たちは消耗品 欠ければ、別の誰かが補充されるだけ
死に損ねた駒を惜しむなんて、ありっこないことだから・・・」
アティ
「・・・・・・」
スカーレル
「「茨の君」の棘は相変わらずみたいね ヘイゼル?」
アティ
「スカーレル・・・」
ヘイゼル
「「珊瑚の毒蛇」か」
スカーレル
「スカーレルよ、今は」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「「茨の君」って・・・」
スカーレル
「キレイな花を咲かせても それを取り巻く無数の棘で、誰も触れない 近づけもしない
それが、このコの通り名の由来よ」
ヘイゼル
「・・・・・・」
スカーレル
「悪いけど、彼女はセンセの手に負えるようなコじゃないわ
ここは、アタシに任せてくれない?」
アティ
「でも・・・」
スカーレル
「だいじょうぶ 昔の馴染み同士で話がしたいだけ
誰も死なないし 死なせないから」
アティ
「・・・わかりました
信じてもらえなくても仕方ないけど・・・
ヘイゼルさん 私たちは、貴方を捕虜として扱う気はありませんから・・・
だから、今は傷を治すことだけを考えていてくださいね
じゃあ・・・」
ヘイゼル
「・・・子供ね」
スカーレル
「そうね、だからこそああまで無防備に人に心を許せる
アナタやアタシとは正反対にね」
ヘイゼル
「・・・・・・」

第16話 彼が願ったこと

~リペアセンター~
アティ
「そっか・・・ もう、歩けるようにはなったんだ・・・」
クノン
「まだ、杖は必要ですが 常人よりも、ずっと回復は進んでいます
暗殺者として過酷な日々を過ごしてきたたまものでしょうね」
アティ
「(素直に喜べないかも それは・・・)」
クノン
「おそらく、いつもの場所に出かけていると思いますが・・・」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「なにを見てるの?」
ヘイゼル
「・・・これよ」
アティ
「(さびついて壊れた塔の廃材・・・)」
ヘイゼル
「役に立たなくなって うち捨てられたまま雨ざらしになって朽ちていく・・・
今の私と、同じね」
アティ
「そんな!?」
ヘイゼル
「本当のことだもの
怪我が治ったところで 今さら、組織に戻ることはできない
裏切り者の烙印を押されて、処分されるだけでしょうね」
アティ
「どうして、組織にこだわるんです?
戻ろうとしなければ 他に、いくらでも選択肢なんて・・・」
ヘイゼル
「それしか、他に世界を知らないから」
アティ
「!」
ヘイゼル
「物心ついた時にはナイフを持って、人の殺し方を教わってた
標的に見立てた人形の急所にうまく突き刺せたら、ほめてもらえて
その時だけ、もらえる甘いキャンディが楽しみだったわ」
アティ
「・・・・・・」
ヘイゼル
「心より先に、身体が大人になって・・・
気づいた時には、もう組織の部品になってた」
アティ
「ヘイゼルさん・・・」
ヘイゼル
「その名前も、本当のものじゃないわ 素性が割れないように組織が与えたものよ
私という存在が形作るものは全て、組織から与えられたものばかり
選択肢なんて無いの 今までも、そしてこれからも・・・」
アティ
「そんなこと!?」
ヘイゼル
「そんなことないなんて安易に否定させない!」
アティ
「・・・っ」
ヘイゼル
「私は「毒蛇」のようにしたたかになれない
追っ手の影におびえてまで、檻から飛び出す勇気はない・・・
囚われのままでも 生きる場所さえあればそれでよかったのよ」
アティ
「でも・・・
アナタはもう、檻の中に帰ることはできなくなってしまったんでしょう?」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「だったら、それ以外の生き方を見つけるしかないじゃないですか?」
ヘイゼル
「そんな方法・・・」
アティ
「アナタが、檻にとどまることにした理由はなんですか?
生きるためですよね?」
ヘイゼル
「!」
アティ
「私には想像することしかできないけど それはきっと、つらい毎日だったはずです
でも、そんな世界で貴方は今日まで生きてこれたんだから
檻の外だって、強く生きられると思います きっと・・・」
ヘイゼル
「無責任なこと・・・言わないで・・・」
アティ
「そうかもしれないです でも、言った以上はしっかりと責任はとってみせますから
そのために必要なことがあれば、私も一緒に考えますから
だから、あきらめてしまうことだけはしないでください お願いです・・・」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「それじゃ、またお見舞いに来ますね」
ヘイゼル
「・・・・・・
貴方の言ったとおりだったわね・・・
本当に、私たちとは正反対よ・・・ まぶしすぎるくらいに」

最終話 楽園の果てで

~メイメイのお店~(二回目)
メイメイ
「ねえ、先生? 一応、ダメもとで聞いちゃうけど・・・
この島はあきらめて みんなで、別の場所に逃げるつもり、ない?」
アティ
「メイメイさん・・・」
メイメイ
「あたしが本気を出せばできちゃうよ それぐらいのことなら」
アティ
「・・・・・・」
メイメイ
「信じられない、か? にゃ、ははは・・・っ」
アティ
「そうじゃないですよ
メイメイさんなら多分、できると思う 気持ちも、すごくうれしく思ってます」
メイメイ
「先生・・・」
アティ
「でもね・・・ やっぱり・・・
私も、みんなもこの島のことを見捨てたくないの」
メイメイ
「・・・でしょうね
あーあ、やっぱしフラレちゃったか?」
アティ
「すみません・・・」
メイメイ
「にゃはは、いいってば そうじゃなくちゃ先生じゃないもんね?」
アティ
「・・・そうだ!
ねえ、メイメイさん 代わりといったらなんですけど
私たちの代わりに連れていってあげてほしい人がいるんです」
メイメイ
「え?」
メイメイ
「なるほどね・・・」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「彼女は、自分の意志でこの島に残ったわけじゃないの・・・
たまたま、私たちに助けられて、ここに居合わせただけです だから・・・
だから、私たちの無茶に、つきあわせるわけにはいかないんですよ」
ヘイゼル
「勝手に決めないで
私は、このまま島と共に滅んでも・・・」
アティ
「無理ですよ、それは」
ヘイゼル
「!?」
アティ
「滅びるなんて、私たち思ってませんもの
だから、ヘイゼルさん 島に残っても、貴方の望みはかないません
ね?」
ヘイゼル
「・・・っ」
アティ
「言ってましたよね? 今まで、自分に選択肢は無かった、って
だったら、これを最初の選択肢にすればいいんですよ」
ヘイゼル
「な・・・」
メイメイ
「この異変の中、貴方が生き残っているなんて普通、思ったりなんかしないわよねえ?」
ヘイゼル
「あ・・・!?」
アティ
「やり直してください 最初からは、無理かもしれないけど・・・
すくなくとも、もう貴方を縛りつけるものは、ここから先には無いって思うから
幸せになってください それが、私から貴方へのお願いです」
ヘイゼル
「・・・・・・」
アティ
「じゃあ、メイメイさん よろしくお願いします」
メイメイ
「任せてちょうだいな!
平和になったら、またみんなで楽しいお酒を飲みましょうね?」
アティ
「楽しみにしてます」
ヘイゼル
「・・・待って!」
メイメイ
「あ、ちょっと!」
ヘイゼル
「一方的、すぎるじゃないの・・・っ!
私は、貴方に・・・っ お礼ひとつさえ、まだ言ってないのに・・・
あう・・・っ!?」
メイメイ
「無茶よ、貴方・・・ 足の怪我だって、まだ完全には・・・」
ヘイゼル
「本当の名前、だって まだ、教えてあげてもないのに・・・っ」
メイメイ
「・・・・・・」
ヘイゼル
「聞いて!
私の本当の名前は!! 名前は・・・っ!」
パッフェルよ・・・ お願い・・・ 忘れないで・・・!

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