魂の行方(アティVer.)

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藍空れぃん。様
アティ
「ようやく、雨もあがったみたいね」
-ノックの音-
アティ
「?
(こんな夜更けにいったい、誰かな?)」
-扉が開く音-
フレイズ
「……」
アティ
「フレイズさん!?」
フレイズ
「こんな夜更けにぶしつけで申しわけないのですが…
ついてきてください
アティ
どうしても、貴方にしておきたい話があるんです」
アティ
「ここは…」
フレイズ
「魔晶の台地
私たちの領域に満たすマナは、この水晶から生み出されています」
アティ
「瞑想の祠と、同じっていうことですか…」
フレイズ
「ひらけた場所のほうがなにかと都合がいいですからね」
アティ
「例えば…私と全力で戦う、とか」
フレイズ
「承知の上でしたか」
アティ
「殺気を感じて…
これでも、一応は元軍人ですし」
フレイズ
「ならば、話が早い」
-剣を抜く音-
フレイズ
「女性相手に、こんな仕打ちをするのは胸が痛むのですがおつきあいしていただけますか?」
アティ
「その前に、聞かせてくれませんか
そこまでして、貴方がファリエルを守ろうとしている理由を」
フレイズ
「いいでしょう
ここまで踏みこんできてしまった貴方にはそれを知る権利がある」
フレイズ
「ファリエルさまがあのように、亡霊として生き続けている原因を作ったのはこの私なのです」
アティ
「!?」
フレイズ
「まだ未熟ながらも精一杯に運命へと立ち向かっていく彼女の魂の輝きを私は心から慈しみ
その助けとなることを心からうれしく思っていました
ですが、それでも越えられない運命がやってきたのです」
アティ
「この島で起こった過去の戦い…」
フレイズ
「乱戦の中で、はぐれ
ようやく私が彼女を見つけ出した時にはファリエルさまは息を引き取られる寸前でした…」
アティ
「…っ」
フレイズ
「半ばまで炎に失われた身体には、手の施しようもなくて…
あの時ほど…私は、自分の愚かさを悔いたことは…ありません…」
アティ
「フレイズさん…」
フレイズ
「死せる者の魂は次の世界で、新たな姿に生まれ変わります
しかし、この島ではそれが不可能であることは、貴方も知っているはずです」
アティ
「島の力に囚われて操られるがままの亡霊になってしまう」
フレイズ
「ファリエルさまを彼女の魂を、そんな目には、会わせたくなかった…
そして…私は、天使であることを捨てました…
自分の魂を分け与え彼女を霊的生命に変え確定されていた運命に逆らったんです」
アティ
「な…」
フレイズ
「天使のもたらす奇跡はその魂に課せられた運命を、全うさせるために用いるもの
その掟を破った私はもう天使ではない
堕ちた天使なんです」
アティ
「そんな…」
フレイズ
「悔いてはいません
生き延びたいと願う彼女の意志を、私はかなえることができたのですから」
アティ
「フレイズさん…」
フレイズ
「私はただ、あの人に安らぎの中にいて欲しかった…
だが、貴方と出会いファリエルさまは変わられてしまった
隠していた素性を明かし、今まで以上に戦いの矢面へと立つようになった」
アティ
「…」
フレイズ
「迷惑なのですよ
貴方は、あの人を危険の中に連れ出していってしまう
私は、それがどうしても許せない」
アティ
「だから、力ずくで私を、彼女から遠ざけるつもりなの」
フレイズ
「そのとおりです
貴方が、彼女との接触を断つことを誓ってくださらない限りは…」
アティ
「お断りします
貴方にも、私にもそんなことを決める権利なんてありません
それは、彼女自身が決めることです」
-剣を抜く音-
フレイズ
「やはり、この場所を選んだのは正解でした」
狭間の領域の住人
「オォォォォォ…」
アティ
「(領域の住人たち…)」
フレイズ
「我らの想いはひとつ
ファリエルさまを守ることです
あえて、あの方の意に背いてでも!」
-剣がぶつかる音-
アティ
「く…っ!」
フレイズ
「貴方なら、誰よりも守ることを願う貴方なら、わかるはずです…
あの方が、あえて危地に向かってその身を投げ出していることを!」
アティ
「わかってます!
ファリエルは、いつもみんなの前に立って災いを受け止めようとして…」
-剣が離れ、お互い飛び退いた音-
アティ
「死なない身体を理由に彼女は、みんなの生命を守る盾になろうとしてるんでしょう!?」
フレイズ
「それを知っていながらなぜ、貴方は止めてはくれないのです…
魂だけの身であろうと傷つけば、痛みや苦しみだって感じるのですよ?」
アティ
「…っ」
フレイズ
「止められない…護衛獣である私には止められないのですよ
だから、私は貴方に託したのに…なのに…っ」
-召喚術を使おうとする-
フレイズ
「貴方は、このままファリエルさまが消えても構わないと言うのですか!?」
アティ
「そんなこと…」
-抜剣-
アティ
「そんなこと、私が望んだりするわけないじゃありませんか!!」
フレイズ
「…!?」
アティ
「見殺しになんかしない
私は、ファリエルも守ってみせる
ただ、私は同時にあの子の気持ちも大事にしてあげたいの
力ずくで、危険から引きはがすことだけが守るってことじゃないはずです!」
フレイズ
「口では、なんとでも言えるでしょう!」
-剣がぶつかる音-
アティ
「それでも、言葉にしなくちゃ、気持ちは伝わりません!」
-碧の賢帝の力ー
フレイズ
「ぐ、う…っ」
アティ
「もう、やめましょう?
フレイズさん…」
-抜剣解除-
アティ
「これ以上、私は貴方と争いたくない…」
フレイズ
「貴方が望まぬとも私には、最後まで戦う理由がある…敗北を認めるわけには…」
ファリエル
「やめて、フレイズ!?」
アティ
「ファリエル…」
ファリエル
「どうして、こんな勝手なことをするの?
私は…」
フレイズ
「貴方の意志で始めた戦いではありません!」
ファリエル
「!」
フレイズ
「これは私闘です…私の存在意義をかけた死闘なのです…」
ファリエル
「フレイズ…」
フレイズ
「護衛獣の使命は召喚した者を守ること
例え、貴方が拒んでもそのためなら、私は戦い続ける!
貴方の魂だけは失いたくない…っ
守りたいんです!」
アティ
「それは違います!
フレイズさん
私たちが戦っても戦わなくてもどっちが勝っても負けても…
ファリエルの未来は彼女にしか、決めることができないんです
そうでしょう?」
フレイズ
「…っ」
ファリエル
「ありがとう…フレイズ…
貴方が心配してくれて私、とてもうれしいよ
貴方のおかげで、私すごく幸せだったわ
だから、もういいの…貴方が、憎まれ役にならなくてもいいの」
フレイズ
「ファリエルさま…」
ファリエル
「それにね、フレイズ
私、今は消えるつもりなんてないよ」
フレイズ
「え…」
ファリエル
「もっと別の未練ができちゃったから
貴方や、集落のみんな
色んな人たちと一緒にずっと、この島で暮らしていきたいの
だから、消えない
もったいなくて消えたりできないよ?」
フレイズ
「あ…」
ファリエル
「ダメ、かな?」
フレイズ
「いいえ…っ」
アティ
「フレイズさん…」
フレイズ
「数々の無礼、どうかお許しください
アティ
もう、私は迷わない
彼女が望んだ道が貴方と共に行くことであるのなら…私も、共に戦います
彼女の魂の輝きを守るために…
そして…今の戦いの中で貴方が見せてくれた偽りのない、輝きを信じて…」
アティ
「ええ!」

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